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映画『DRAGON ドラゴン』レビュー

 毎月1つ以上の映画を観ています。せっかくなのでブログを始めようと思い立った最初の記念すべき映画はこれ!

DRAGON ドラゴン

 

 早速あらすじですが、ワタシがこの映画を知るキッカケになったツイートを引用します。 

 ……絶対に観なければならない、と強く思わせられました。

 検索(被)にあまりにも不向きなタイトルながら、どうにかこうにか最寄りのTSUTAYAで取り扱っていることを調べあげたワタシは、その場の勢いですぐレンタル!

 なお、日本での劇場公開はしていなかった模様。

 

*「ドラゴン アリョーナ」で検索すればヒットします。
 原題で検索したほうが確実!(ただし、ロシア語……)

 

原題 『On-drakon』
製作 2015年, ロシア
主演 アリョーナ・チェーホフ
マドヴェイ・ルィコヴ
鑑賞環境 PC, レンタルDVD
言語 吹替なし/日本語字幕

 

 My評価は★★★★★! これは書かねばと思ってブログを始めたくらい好ましい要素の詰まった映画でした。

 ……と言っても時間がなくて1回しか見れなかったんですけど。

 もういいです、円盤買いますから!

 

 さて、ここから先はレビュー本文です。ネタバレも含まれると思って、どうぞ。

*1回しか見てないので明らかにおかしい部分があればご指摘ください! 円盤買ってから確認のうえ、修正させていただきます。

 

ビジュアル

 さすがのVFXで、美しさは折り紙付き。

 主人公・ミロスラヴァ(=ミラ)の故郷も、ロシアらしい雰囲気のアルカイックさを感じられて◎。

 

ストーリー/キャラクター

 ラブストーリーでは特にありがちな性格の悪いキャラがおらず、安心して2人の行く末に集中することができます。

 

 イーゴリも悪い人間ではないと思います。

 “自分が娶るはずの花嫁が目の前でドラゴンの狂爪に攫われかけている”という現実に対して、手荒ながら宙空のドラゴンに届くであろう手段でそれを止めようとするイーゴリ。その姿は苦労して取り戻した、今度こそ手に入るはずのものを再び取られそうな人間であり、そこに花嫁への愛の有無は問われないように思います。ただ、ドラゴンに攫われることがミラの意思であることを知りながら、それを尊重する気はなかった……。

 「“彼女”への愛はあるけども自分から離れようとするその意思は尊重できない」といった男性(キャラクター)は珍しくなく、性格の問題だと考えます。そこに善悪は存在しないのではないでしょうか。

 

 そしてそのイーゴリを止めたのが、名も無きモブ(笑)だったというのも、世界の優しさを感じます。

*ロシア語ホントにわからないので、名前あったらすみませんw あくまで準主役級のイーゴリとの対比ということでここはひとつ。

 「位置取りがイーゴリに近く、強行に及ぼうとする彼を止めるに最も適していた。だから止めた」といえば容易に聞こえますが、相手はただの人間とはいえ“英雄の孫”……同じくただの人間の、ましてやモブにとってはハードルの高かったことに思えます。

 いくら、その直前に花嫁の姉が「やめて!」と叫んでいたとしてもです。公爵家の最上位は当主であり、その人からの命令であればいざしらず、その娘の慟哭など、あのような大事な舞台において勝手に聞くことは本来ならば許されないはず。

 しかし、彼はイーゴリを止めました。(言葉は悪いですが)たかがモブひとりに行動を阻害されたイーゴリの方が情けなかったという見方はしません。

 あの場においてイーゴリ以外の誰もにミラの意思を尊重する気持ちがあったとすれば、その具現こそが名も無きモブ、その行動に表れたのだと思っています。

 

 さて、主役の2人については本編に関わるのであまり突っ込んだことは書きませんが……

 ドラゴンの青年(=アルマン)は、“ドラゴン”を銘打つ割に人型でいる時間が長いのですが、台詞や行動の端々から滲む人間不慣れ感がとても良かった。そして、その青年の戸惑いに答えを示すミラが相対的に大きく映ります。それ自体が彼女の「アルマンには私が必要」との自信に繋がっていったのでしょうし、自分の気持ちに気付いたあとの告白に繋がります。さすがラブストーリーなだけあって、心情の推移が丁寧です。

 あ、ラブストーリーなのに、物語の9割で手を繋ぐことすらない、というのは個人的に大好きです。特に、手を繋ぎたくても繋げないから袖を掴むとか、とてもいじらしくて◎。

 

オマケ:考察

 本編には描かれていませんけど、一つ気になることが……

  • イーゴリ=過去にドラゴンを殺した男――英雄の孫
  • アルマン=過去に英雄に殺されたドラゴンの世代に産まれた?

 2人共、外見年齢は同じか、イーゴリの方が年上? くらいです(髪型補正あるかも……)。

 英雄がドラゴンを殺した世代からもう生贄は出していないとなると、最後の生贄=英雄の近親、すなわちアルマンはその世代の産まれだと考えられます。

 英雄の世代から生きているのに、若々しい青年の外見をしているアルマン。

 ここから導けることは、人間とドラゴンとでは生きる時間が異なるということです。

 

  あらすじから見込まれたとおりのエンディングを迎えた2人ですが、描かれることのないその先、抗いようのない種族の理の違いという壁に、片方だけがどうしようもなく取り残される……。

 ンー、それはなんともはや、今度こそ「愛に堕ちる――」かも、しれませんね。

 

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